さほど高価格でもなく、ルックスが抜群によいため、キャンプでは大人気のオピネル(Opinel)の折りたたみナイフをしばらく使ってみたのでレビューします。
ただ、残念ながら今では僕の場合はキャンプでの出番はほぼなくなっています。
この記事では、僕のキャンプで、なぜオピネルのナイフに出番がなかったのか、あえて僕が感じたオピネルナイフの不便な点を中心に説明します。
オピネルナイフについて
オピネル(Opinel)社はフランスの包丁・ナイフメーカーであり、当記事で述べている折りたたみナイフ以外にも、通常の包丁・ナイフを製造しているメーカーです。
ただ、少なくとも日本のキャンパーの間では、オピネルといえば折りたたみナイフしか頭に浮かばないくらい、その折りたたみナイフがよく知られているメーカーです。
以降当記事では、オピネルの折りたたみナイフ全般を単に「オピネルナイフ」と表記します。
オピネルナイフと言ってもブレード(刃)の形状や材質、サイズなど様々なものがありますが、キャンブなどで使われるものは、ほとんど以下のような形状です。
この美しいフォルムは、他のナイフにないオピネルナイフ最大の強みだと思います。
リーズナブルな価格にも関わらず(本格的なナイフと比べると安物の部類に入るナイフにも関わらず)世界中に愛好家がいるナイフなんて、他にはそうそうないと思います。
使用レビュー
僕が購入したのは、Colorama(コロラマ)というナイフです。サイズは#8でカラーはカーキのものです。
おそらく、最も人気があるのは、このようなカラーのペイントがされていない、木材がそのまま見えているタイプだと思います(僕も見た目はそっちのほうがいいと思います)が、後に説明する理由により、あえてこちらを選んでみました。
グリップ(柄)
特徴的な丸いグリップ自体は、僕にはかなり握りやすいです。
#8サイズのグリップですが、すべての指を使ってしっかり握ろうとすると平均的な成人男性でちょうど良いくらいではないかと思います。
ただ、このナイフは人差し指をかける窪み的なものがまったくないので、力を入れて使う場合などはちょっと怖い感じがします。ブレードの根本まで刃が切ってあることもあり、ちょっと手が滑ると、人差し指をやっちゃいそうな気がするんです。
ただこれは、薪を削ったりとかの作業をする場合のことであり、後述しますがそもそもこのナイフはそういった用途には向いていないです。通常の料理に使う分には問題ないと思います。
ブレード(刃)
オピネルナイフには、ブレードがステンレスのものと鋼のものがあります。
一般的には、鋼は錆びやすいので手入れが簡単だがすごくよく切れると言われています。ただ、僕の経験(鋼の経験は包丁だけですが)では、ちゃんと研いだあとはそこまで切れに差はないと思っています。もちろん繊細な捌きが必要なプロの人は別だと思いますが。。
鋼の刃は研ぎやすくてよく切れるのはいいのですが、とにかくサビ対策に気を使う必要があるので、僕は自宅のキッチンで使う包丁も含め、鋼のものは買わなくなってしまいました。
というわけで、僕のオピネルナイフはステンレスのブレードの物を使っています。
刃厚は約1.7mmです。これは、アウトドアナイフとして考えると薄いほうですね。本格的なブッシュクラフトをするには弱すぎかと思います。
ただ、料理に使うには薄いほうが使いやすいので、厚みのあるナイフよりはずっと良いですね。
実際、キャンプなどのアウトドアでは、オピネルナイフは料理用途で使うのに適していると思いますし、実際その使われ方がほとんどではないかと思います。
切れるかどうかについては、これはちょっと記憶があやしいです。まあ箱出し(新品)の状態でもそこそこ切れたように記憶しています。ナイフについては、僕もそんなに多くのものを使ったことがあるわけではないので相場がよくわかりませんが、安い(2,000~3,000円)ナイフにしては刃が入っているという印象が残っています。
ブレードの素材によって違いが出るのが、切れ味がどれくらい続くか(長切れするかどうか)というところだと思っていますが、このナイフはキャンプで何回か使っただけなので、これもちょっと評価のしようが無いです。
ブレードに関しては、すごく良いとも悪いとも思いません。ただ、開いたときのハンドルを含んだシルエットはすごくきれいだと思います。
開閉機構
ロック機構は特徴的です。
ブレードの根本にあるセーフティーリングを回すことでロック/アンロックを行います。
これの素晴らしいと思うところは、閉じた状態でロックをかけられることです。閉じた状態でロックをかけると、なにかの拍子に刃が出てきちゃうという危険を防ぐことができますね。
その一方で(無理に欠点を挙げるなら)問題は、ロックをかけないでも使えてしまうことです。多くのロックつき折りたたみナイフのロック機構は、ブレードを出すと勝手にロックが掛かる構造です。
※ オピネルナイフは爪を引っ掛けてブレードを引き出すタイプです
もう一点気に入らないのは、このロックの機構だと片手でブレードを開閉することが出来ません。
僕は、何かを左手に持っているとき、右手でポケットからさっとナイフを出して使いたいことって意外とあるんですよね。わりと多くの折りたたみナイフは片手で開けるようになっていますが、オピネルナイフでそういう使い方はちょっと出来ないです。
濡れると固くなる問題
僕にとって、特にキャンプの調理で使うには最悪レベルで許容できかったのがこの問題ですね。
しかも、僕はこの特徴を知ってて購入しているわけです。どちらかというと、最悪なのはこういうもんだと知っておきながら、それを使って文句を言ってる僕ですよ。
オピネルナイフを知る人はみな知っていることですが、このナイフは水に濡れるとブレードの開閉がめちゃめちゃ固くなります。
オピネルナイフのブレードを支えているのは、両側の木材になります。ブレードの開閉が固くなるのはこの木材が、水を吸って膨張し、ブレードを強く挟んでしまうからなんです。
塗装により、水を吸わないことを期待したのですが、結果は意味がありませんでした。
ブレードの開閉が硬い問題について、Opinel社のサイトにこの問題に悩む人をぬか喜びさせる記述がありました。
Improve the opening of the knife
…(略)…
If you are having difficulties in opening your Opinel, try the Coup du Savoyard® (The Savoyard’s tap), an ancestral tip which has been passed down from one generation to the next.
- Turn the rotating lock to free the groove.
- Hold the knife by its handle: The rotating lock is positioned in the palm of your hand, the groove is facing downwards and should not be covered by your fingers.
- Tap sharply on a hard surface (a table for example, but avoid fragile surfaces which could be damaged)
- On impact, the blade is released and opens easily.
With this simple action, those in the know can open even the most stubborn Opinel…
(翻訳)
ナイフの開きを改善する
オピネルナイフを開くのが難しい場合、「サヴォア人のタップ」と呼ばれ、代々受け継がれる小技を試しましょう。
- 回転ロックを回して、ロックを解除します。
- ナイフの回転ロックを手首側にし、溝を指がかぶらないように下に向けて持ちます。
- テーブルなどの硬いところ(壊れやすいものは避けてください)を鋭く叩きます。
- 衝撃によりブレードが出てきますので、簡単に開くことができます。
これを知っていれば、このような簡単な方法で固くなったオピネルを開くことが出来ます。
ナイフの開き具合をよくする方法かと思いきや、読んでみると開かないナイフを開ける方法なんですね。しかもその方法に長年受け継がれた呼称まであるようで。。
日本のメーカーがこんなんだったらボロクソに叩かれそうな気もしますが、つまりメーカーとしては、カイゼンする気はないからこのままうまいこと使ってねということなんですね。
その後、完全にナイフを出すにはちょっと力がいるし、怖いですけど。。
メーカーがほぼ否定しているに等しいのですが、この問題をなんとかしようとしている人も多くいます。
例えば、FladeFolumsというイギリス企業が運営している、ナイフ愛好家の掲示板があるのですが、そこにこんなスレッドがあります。
※ このスレッド(というかこの掲示板)に参加している人の多くはアメリカの人です
Waterproofing Opinels? (yes, again) :(訳) オピネルの防水化?(そう、またこの話題だよ)
内容をいちいち引用していたらきりがないので、ここではいくつかのコメントの訳を簡単に紹介するだけにします。興味のある方は上のリンクから見てみてください。
※ 下記の翻訳はかなりオリジナルから意訳&端折っています。
- (スレ主) いろいろな情報をみて、ジョイント部にワセリンをつけて熱して見たけど、やっぱり濡らすと開閉できなくなる。誰かオイル漬けとかスキーのワックスなどを試してみた?
- 削ってみたり、亜麻仁油のオイル漬けやワセリンをドライヤーで溶かしたりとかしてみたよ。20分は防水できるようになったけど、それ以上やると固くなるよ。オピネルは本当に大好きだよ。だけど何に使うか予想できないときにはオピネルは持ち出さないよ。
- バラしてハンドルだけを桐油に数日浸した後、余分な油を拭き取る。これで問題ない。
- 木製のものはどうしようもないよ。プラスチックのハンドル(注:オピネルにはアウトドア用としてプラスチックハンドルのモデルもあります)の物を使いな。
- それはそうだろうけど、それはないよ。(注:プラスチックではオピネルの魅力は無いといううニュアンス)
- 床につかうワックスをドライヤーで熱してブレードのスロットとハンドルの外側に溶かし込んだら濡らしても膨張しなくなったよ。
- 防水は不可能です。
こんな感じで、うまくいっている人もいればそうでもない人もいます。
個人的には、ネット検索でよく出てくる亜麻仁油にそのまま漬け込むというのは失敗するリスクが大きいのではないかと思います。亜麻仁油が酸化・固化したら確かに水を弾く(固化した油は疎水性)はずですが、木材と金属パーツの隙間に入った油が固化したりすると状況が悪くなるかもしれません。
可能性があるとしたら、全部バラして木製ハンドルの表層だけオイルでコーティングするくらい(上記の掲示板でもこれでうまくいったと言っている人がいますね)かと思ったのですが、バラすのが大変そうなのであきらめました。
そもそも塗装したモデルを使っても全然だめだった時点で、防水は無理スジなんじゃないかと内心思っています。
https://campmemo.com/opinel-disassembly
僕はこのページを見つけ、そして断念しました。。。
正直なところ、僕にとってオピネルナイフは、そこまでやって使うほどのものでもないんです。(オピネルを愛好している方には本当に申し訳ありません。あくまでも僕の個人的な感想です)
実用性だけを見れば、同じ価格帯でこんな苦労をする必要のないナイフは他にいくらでもありますから。(多くの人にとって、この苦労が魅力の一つだということは重々理解していますよ)
いずれにしろ、僕は調理の流れでナイフを使う前にいちいち手をきれいにするのは面倒なので、手が濡れていようと油がついていようとそのままナイフを握りたいんです。
なので、使った後は洗剤と水でジャバジャバ洗いたいんですけど、これが出来ないとなるとかなりマイナス評価になってしまいます。僕の使いたいやり方には合わないんですね。
包丁を使うからオピネルナイフはいらない
先にも述べましたが、オピネルナイフのブレードは調理に向いている(逆に調理以外にはさほど向いていない)と思っています。
ここで、僕が調理に使っている刃物ですが、以下の物です。オートキャンプなので携帯性はあまり重要ではないので、普通に包丁を使っています。
大きい方の包丁は、以前自宅のキッチンで使っていた貝印の三徳包丁です。今は自宅キッチンを引退してキャンプ専用になっています。
小さい方は百均のペティナイフで、これもキャンプ専用です。
これらは、キャンプ専用なので、普段はキャンプの道具入れに入れっぱなしにしています。
見てわかるように、オピネルナイフはそのサイズが百均のナイフとかぶっているんです。
そして、調理に関しては、この百均ナイフのほうがオピネルナイフより使いやすいです。
百均ナイフのほうが刃が薄いので大抵の食材は切りやすいですし、油で汚れた手でも躊躇なく掴むことが出来ますし、濡れたところにぽんと置くことも出来ます。
どうしても、気を使いながら使わざるを得ないオピネルナイフは面倒なんですよね。
当たり前といえば当たり前なのですが、調理に関してはオピネルナイフよりは調理専用に作られている包丁・ナイフのほうが使いやすいです。百均ナイフも、研げばちゃんと切れるようになるので、たまにしか使わないキャンプでは全く問題ないです。
そうなると、オピネルナイフの出番はあまりなくなってしまうのですよね。調理に使うのは早々にやめて、後は薪を細く削ったり割ったりするか、ロープを切ったりするため、どちらかというと無理矢理理由をつけて使う感じになってしまいました。
そんなわけで、調理に使うにも、他の用途で使うにも中途半端になってしまい、もはや僕のキャンプではオピネルナイフの出番がなくなってしまったというわけです。
最後に
誤解しないでいただきたいのですが、僕はオピネルナイフがだめだなんて言いたいわけではありません。
ここでは、あくまでも僕が実際に使ってみて僕にとって問題があると思ったことを書いただけです。実際、キャンプでの出番がなくなったオピネルナイフを手放す気は毛頭ないです。
実際に手にしてみると、オピネルナイフが世界中にファンをもつ理由がよくわかります。
僕は実用面においてオピネルが最高のナイフだとは思いませんが、オピネルナイフってそういうもんじゃないと思っています。
非日常を楽しむキャンプだからこそ、あえてこういったナイフを使うのもいいとは思います。僕は、どちらかと言うと実用性を重視しすぎちゃうんですよね。
ちなみに、同価格帯でもうちょい実用向けのナイフの定番はこれですかね。実はこれ使い始めたので、もうすこし使ってみたらこちらもレビューしようとおもいます。
追記 : 油漬け(適当版)をやってみた → 大した効果も副作用もなし
鋳鉄スキレットにシーズニングをしてみる実験(別記事)をするために、アマニ油を買ったのでちょっと使ってみようと思いました。
最初に言っておきますが、以下の方法はやっても効果なかったですよ。ダメだということの報告も意味があると思うから書くだけです。
とはいえ、先にも述べたように、あまり手間暇がかかるようなことはしたくないです。なので、ナイフの木材部分にアマニ油を塗ってみただけです。
俗に言う「油漬け」ではありません。防水であれば、木材に染み込ませることより、木材の表面を油(の重合体)で覆うことがより重要なんじゃないかと思っていますし。
※ 油の重合体とはなんなのか気になる方は、このアマニ油を使ったこの実験記事を参照してください。
方法は簡単です。
こちらの記事では、乾性油の油漬けで防水に成功されています。説明がとてもわかりやすいですよ。
ハンドル全体にアマニ油を薄く塗ります。ロックリングだけは簡単に外せるので外しました。
ブレードの取付部には油を流し込みます。
そして、隙間に余分な油が残らないよう、下の写真のようにして数日放置しました。
結果
いつもやるように、水と洗剤で全体を洗ってみました。
結果、油を塗る前より若干ブレードの開閉がしやすくなった程度です。油を塗る前は、水洗いしたら15分程でサヴォアのタップとか言うのをやらないとブレードが出ませんでしたが、上記の処理後はタップしなくてもギリギリブレードを開けるくらいになりました。
おそらく完全に水につけたらもうだめだと思います。
ちなみに、僕は全く結果を保証できませんし、特に推奨もしませんが、アメリカの人たちで比較的成功例が多そうなのは、油漬けではなく、表面にワックスやウレタンを塗り、ブレードの可動部はワセリンを溶かし込むというものです。
油漬けの場合、複数の人が強調しているのは、油につける前に、白熱電球の近くに置くなどして完全に乾かすというものでした。もしかすると、湿気の多い日本の夏にやるには厳しいかもしれませんね。
上記の方法で状況が悪化したと報告している人も多いですので、失敗を覚悟の上でやったほうがいいとは思います。