スキレット/ダッチオーブンのシーズニング方法と油の種類による違い 【ブラックポット化】

鋳鉄製ダッチオーブンやスキレットを正しくメンテナンスし、効率よく良質な保護膜を形成するため、ダッチオーブンのシーズニングやブラックポット化への近道となる(かもしれない)方法を紹介します。

本記事の前半では、シーズニングの方法と手入れの正しい方法を理解するために必要かもしれない知識を説明します。
※ ネット上の間違った情報は、ここで誤解されていることが原因になっていたりすると思います。

記事の後半では、実際のシーズニングの方法や手入れについて説明し、最後にスキレットにいくつかの油を用いたシーズニングを行い、その結果などについての比較実験をしてみました。

もちろん、鋳鉄製のスキレットやダッチオーブンだけではなく、鉄製のフライパンや鉄鍋・鉄板のシーズニング(油ならし)も同様の考え方でOKです。

シーズニングってなに?

シーズニングとは?

シーズニングって言うと、普通は調味料のことかと思いますよね。実際、英語にして書くと”Seasoning”と、調味料を意味するシーズニングと同じなんです。

鋳鉄のダッチオーブンやスキレットのシーズニングといった場合、もちろんそれらに味付けなんかするわけではなく、あえて訳すなら”慣らし”といった感じでしょうか。
鉄鍋・鉄フライパンなどを最初に使うときは”油慣らし”という作業がありますが、これと同じような意味になります。

では、ダッチオーブンやスキレットのシーズニング(油ならし)とは何かというと、これは、商品の製造時に施される錆止めのコーティングなどを剥がし、鉄の保護膜となる被膜を表面全体に形成させることです。
この被膜によって、スキレット等が錆びるのを防ぐと同時に、調理する際の油のなじみが良くなる(油をはじかなくなる)ようになるのです。

そしてその被膜とは、油を化学合成した樹脂のようなものです。
これについては、このあと少し細かな説明をします。

この被膜の正体を知ることが、正しいシーズニングや手入れの方法を理解する上で重要になってきますので、ぜひこの先まで読んでいただきたいです。

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最近は出荷時からシーズニング済みのスキレット・ダッチオーブンなども増えています。最初に使う前にシーズニングが必要かどうかは、購入した商品の説明をよく見て確認しましょう。

シーズニングについて誤解があるかもしれないこと

この後の説明はちょっと長いしややこしい話もありますので、まず最初に、重要なポイントを先にまとめてしまいます。

  • シーズニングでできる被膜は「油膜(油の膜)」ではない
    • その正体は油の主成分である脂肪酸の重合体(高分子ポリマー)
  • シーズニングに使う油のおすすめはグレープシードオイル
    • 逆におすすめしないのはオリーブオイル
  • シーズニングしたスキレット/ダッチオーブンは洗剤で洗うことを推奨
    • 重曹で洗ってはダメ
  • シーズニングでくず野菜を炒める必要はない
    • やってもいいけど正しくシーズニングが出来ていれば必要ない
  • 黒錆の形成は必須ではない
    • やってもいいけど正しくシーズニングができていれば必要ない

どうでしょうか? これまで思っていたのと違うことがあったりしませんか?
これらはシーズニングについて正しく理解していれば導き出されることなのです。

それではここから、そのシーズニングについて「ちょっとだけ科学的に」説明していきます。

ダッチオーブン/スキレットに形成される被膜の正体

ここで、鋳鉄スキレットやダッチオーブンの保護膜が一体何なのかについて、もう少し詳しく説明します。

以下の記事にも書きましたが、よく言われる「酸化膜(四酸化三鉄:黒錆)が厚みをつけていったものがダッチオーブンの保護膜となり、やがてその被膜は厚みをましてブラックポットができる」というのは正しくありません。
※ Wikipediaにもそのようなことが書いてあります(2020/6時点)が、違うんです。

「炭化皮膜」なるものができるという話もありますが、それも何か違うように思います。
※「炭化皮膜」という用語(造語?)の定義にもよりますが、少なくともこれを”炭化”皮膜と呼ぶのは無理があるように思います。

保護皮膜の正体は油が重合化したもの(重合油)

実は、英語でググってみると多くの例が出てくるのですが、一例として、アメリカのトップ鋳物食器メーカーであるLODGEがウェブサイト上で以下のように述べています。

When oil is heated in cast iron, it bonds with the metal through a process called polymerization, creating a layer of seasoning.

LODGE : All About Seasoningより引用

(翻訳)
油が鋳鉄上で熱せられると、重合化と呼ばれるプロセスを経て、シーズニングの被膜を生成する。

つまり、この被膜の正体は油の重合体(ポリマー)というわけなんです。
オーブン(ダッチオーブンじゃなくて普通のオーブン)の中やコンロ周りに黒くこびりついてなかなか落ちないあいつがまさにこれです。

実際には、熱したときに油の一部が炭化したり、もともと油に含まれる不純物もあるため、炭素などの不純物も混じった油のポリマーだそうです。

さらに、この炭素が程よく混じっているということが、被膜の耐久度を上げているそうです。この情報の真偽については僕にはちょっと分かりませんでしたので、以降はポリマーについての説明をしていきます。

この後に説明するように、油が重合化したものは、もとの油とは分子構造から異なる別の物質になります。
油というよりはプラスチックっぽい感じですかね。

ところで、この重合油の被膜は、親油性が高い物質(油をはじかない性質を持つ物質)です。
この後説明しますが、重合油は油の分子が連結された、分子構造的には親戚みたいなものです。なので相性がいい(はじいたりせずによくなじむ)というわけです。
シーズニングで油のなじみが良くなるというのはそのためなんです。

ちなみに、プラスチックの食器の油汚れが落ちにくいのも、親油性が高い、つまり油によくなじむからです。
多くのプラスチックも、実は油を重合化させたものです。そういう意味ではシーズニングの被膜と共通点がありますね。
※ 実際には原料となる油の種類や添加物、重合のしかた等も違うので、同じ物質ではありません。

油の重合化とは

オレイン酸、リノール酸、リノレン酸って、なんのことかはわからないけど聞いたことはあるという人が多いのではないでしょうか?

このオレイン酸とかリノール酸、リノレン酸というのは、油の主成分である、脂肪酸の一種なんです。
そして、脂肪酸のうちでもこの3種類が普段口にするような油(特に植物油)の主成分となっているのです。

このあたりの説明ですが、理解を簡単にするために細かい説明を省いていたり、必ずしも正確でない説明や表現があります。ご了承ください。

以下にこれらの脂肪酸の分子構造を示します。

脂肪酸

もちろんこの構造を理解する必要はありません。僕もちゃんとわかっていませんし。
ここで注目しておきたいのは、矢印が示している部分です。ここでは炭素と炭素が2本の線でつながっていますね。これを炭素の二重結合といい、実はこの二重結合が先に述べた油の重合化に大きく関係してくるのです。

それでは、これら脂肪酸の重合について説明します。

下の図は、2つの脂肪酸の分子が重合して一つに繋がる様子を表しています。

重合化

重要なポイントは、この図を見てもわかるように炭素の二重結合と酸素の供給です。

上の図を見てわかるように、重合化は炭素の二重結合がある場所が酸化(酸素と結合)するために起きるものです。

このように、脂肪酸が重合化すると、それまで個々に自由に動くことのできた分子も、互いに連結して巨大な分子(つまり高分子)になります。
こうなると、分子の動きの自由度がなくなり(つまり流動的な液体ではなくなり)、最終的にはしっかり固化されることになります。これが重合体(ポリマー)と呼ばれるものです。
シーズニングによる被膜の正体は、こうして液体の油が個体のポリマーとなって形成されたものです。

そのため、炭素の二重結合の数が多い脂肪酸のほうが重合化しやすい、すなわちシーズニングの際の被膜を形成しやすいということになります。

ここで、最初の図に戻ってみますと、炭素の二重結合は オレイン酸 < リノール酸 < リノレン酸 の順に多くなっています。

シーズニングの皮膜を効率よく形成するには、リノレン酸やリノール酸を多く含む油が適していることがわかりますね。

シーズニング/ブラックポット化に適している油はどれ?

先に、油が重合化するためには、二重結合が多いほうがよいと説明しました。

炭素の二重結合の多さを示す指標として、ヨウ素価というものがあります。
ヨウ素価が高いほど、含まれる炭素の二重結合が多いということです。

油の固化のしやすさをヨウ素価の大きさでざっくり分類すると、乾性油(ヨウ素価が130以上)、半乾性油(ヨウ素価が100から130)、不乾性油(ヨウ素価が100以下)の3つに分けられます。

このうち、乾性油に分類されるものは、加熱などの処理をしなくても空気中で完全に固化する性質を持ちます。一方不乾性油のほうは室温の空気中ではほとんど固化しません。

油絵の絵の具がカチカチに固まるのは、絵の具を乾性油に溶かしているからなんだそうです。だから”油”絵というんですね。
絵の具の水分が蒸発して固まっているようにイメージしちゃいがちですが、実際には油が重合化してポリマー状になっているのですね。

話を戻しますと、一般的な食用油の場合、リノール酸やリノレン酸を多く含む油はヨウ素価が高くなり、乾性油に分類されます。

ここで、代表的ないくつかの油のオレイン酸、リノール酸、リノレン酸の含有率とヨウ素価を表にしてみます。(精製方法などにより実際の値は前後します。これは一例であり、あくまでも目安と考えてください。)

オレイン酸[%]リノール酸[%]リノレン酸[%]ヨウ素価引用
オリーブオイル77.77.20.475~94**1
ごま油39.743.90.3103~118*2
菜種油(ローエルシン)64.018.78.8101~122*2
大豆油25.352.26.6114~138*2
グレープシード油15.869.60.1124~143*3
べに花油(ハイリノール)16.873.00.4140~150*2
亜麻仁油17.016.058.5168~190*2
えごま油22.412.556.4192~208**1

*1 横関油脂工業株式会社:製品カタログ,  *2 カネダ株式会社:油脂の脂肪酸線分表 *3 Wikipedia

コメント

ラードやバターなどの動物性の油は、上記の二重結合を含む脂肪酸(不飽和脂肪酸)の含有量が少ないので、シーズニングには向きません。
塩分を含む油脂(バター・マーガリン等)は金属を腐食させるのでもっとダメです。

オリーブオイル

シーズニングにはオリーブオイルが良いと紹介されているケースが多いと思いますが、実はオリーブオイルはヨウ素価が100以下の不乾性油であり、被膜は作りにくい部類の油です。

なんとなく、いい事ずくめの万能オイルってイメージのオリーブオイルですが、体にいいからと言ってスキレットやダッチオーブンのシーズニングにも向いているっていうわけではないのですね。

もちろん、保管時に油を塗ること自体、サビを防ぐ効果はありますし、加熱をすることなどによりある程度の重合化はするはずです。

オリーブオイルを塗ることが全く無駄なわけではありませんが、一般的なサラダオイルは菜種油と大豆油のブレンドですので、それらよりヨウ素価の低いオリーブオイルをあえて使う必要はないだろうと思います。

コメント

特に(エクストラ)バージンオイルは不純物も多いので、シーズニングには不向きかと思います。バージンオイルはちょっと高価だし、わざわざ不向きなシーズニングに使うよりは、おいしくいただきましょう。

亜麻仁油(アマニ油)

ヨウ素価が高い亜麻仁油の利用を推奨する情報を見かけることは多いですが、実は亜麻仁油も良くないかもしれないのです。

室温でほうっておいても固まる乾性油である亜麻仁油であれば、ダッチオーブンやスキレットのシーズニングや普段の手入れに最適に思えますよね。

実際、先述の通りシーズニング等に亜麻仁油を推奨する人は多いですし、仕上がりの見た目がきれいになるのは確かなようです。

ただ、この亜麻仁油で形成した被膜は剥がれやすいという報告が(今回主な調査対象としたアメリカでは)かなり多いです。
※ 少数ではありますが数年以上もうまくいっているという報告もあります。

以下に、亜麻仁油を非推奨としている例をあげます。

We’ve tested a wide variety of oils commonly recommended for cast iron seasoning, and have found that grapeseed oil provides the best long-term results. While flaxseed oil is also a popular choice, it can produce brittle seasoning prone to flaking — especially when applied in consecutive coats.
FIELD COMPANY:Cast Iron Seasoning Instructionsより引用

(翻訳)
我々はよく推奨されている多くの油で鋳鉄のシーズニングをテストしました。そして、グレープシードオイルが最も長持ちする被膜を形成すると結論づけました。亜麻仁油も選ばれることの多い油ですが、特に被膜の層を重ねていくと、もろく剥がれやすくなります。

This misconception is particularly strange, as flaxseed oil doesn’t do well when it’s heated. It’s true that this oil produces an aesthetically pleasing finish when used for cast iron seasoning, it’s also prone to flake off much more easily than other fats.
FOOD&WINE:9 of the Wildest Misconceptions About Cast Ironより引用

(翻訳)
(亜麻仁油がシーズニングに最適な油であるというのは)見当外れな誤解です。なぜなら亜麻仁油は加熱に強くないからです。鋳鉄のシーズニングに用いるとき、亜麻仁油が美しい仕上がりを見せるのは確かですが、他の油と比べて剥がれやすくもあるのです。

Flax seed oil, while it does create a very hard surface in the beginning, has very serious problems.

  1. The biggest issue with flax seed is the reported issue of flaking by a lot of users. Do a search for flaking on this sub and you’ll see a lot of reports of people who use flax seed.

  2. It’s really finicky to get it applied correctly. It needs something like 6 or 7 coats which is, frankly, ridiculous. One coat should get you to cooking ability, 3 should get you to almost non-stick if you do it properly.

  3. It’s VERY expensive.

  4. It’s works deceptively. You season your cast iron pan with flax and it looks great! You even use it for a while with no problems, but then, after 6 months or a year, it starts flaking. This happens often and many times after telling others how great flax is.

reddit:Whi I don’t recommend Flax Seed Oilより引用

(翻訳)
亜麻仁油は、最初は非常に硬い皮膜を生成しますが、深刻な問題を抱えています。

  1. 亜麻仁油を使うことの最大の問題は、多くの人が報告しているように剥がれ落ちるという問題です。このサブ(redditのサブレディット)で剥がれ落ちることについて検索すると、亜麻仁油を使った人の多くの報告がみつかります。

  2. これをきちんと使うのは非常に面倒です。正直なところ馬鹿げた話ですが、亜麻仁油は6-7層の皮膜が必要です。本来であれば、ちゃんと皮膜をつくった場合1層でコーティングの効果があり、3層もあればほとんど食材が焦げ付かない被膜が形成されなければなりません。

  3. 亜麻仁油は非常に高価です。

  4. ぱっと見はうまく出来ているように見えるのです。亜麻仁油でシーズニングした場合の見た目は素晴らしいです! しばらくの間は問題ありませんが、半年から1年使った頃に皮膜が剥がれ始めます。これは、すでに亜麻仁油の素晴らしさを他の人に言い触らしたあとになって頻繁に起きることです。

調べても文献等が見つからず、ここからは僕の予想なのですが、リノレン酸を多く含む亜麻仁油の重合体は、剛性が高すぎるのではないかと思います。

先に説明したように、脂肪酸の重合化は炭素の二重結合があるところでおきます。この二重結合が多いリノレン酸の重合体は、その結合が強いため、負荷がかかった際に力を逃がす柔軟性があまりない(剛性が高い)のではないかと思うのです。
炭素が適度に含まれているほうが耐久性があるという話も、炭素などの不純物が多少含まれていたほうがこの結合に”遊び”ができて柔軟性が高くなるためかもしれません。

ダッチオーブンやスキレットは熱すると当然膨張します。このとき、鋳鉄と被膜の膨張率の違いから、それらの境界にはおおきな力がかかると思われます。被膜の剛性が高すぎると、その力をうまく吸収できずに剥がれ落ちてしまうのではないでしょうか?

もしこれが正しいとするならば、リノレン酸を同じくらい含むえごま油も同様の問題があるかもしれません。

えごま油をシーズニングに使ったという報告をまったく見つけることが出来ず、実際のところは分かりません。
よく知りませんが、アメリカにはえごまなんてないのかな?
べに花(サフラワー)油(ハイリノール)
コメント

混同されていることがあるようですが、べに花油は”サフラワーオイル”です。ひまわり油の”サンフラワーオイル”とは別物ですよ。

べに花油でのシーズニングも、試してみたという報告は見つかりませんでした。

ちなみに、べに花油にはハイリノールタイプとハイオレイックタイプがあり、リノール酸が多く、ヨウ素価が高いのはハイリノールタイプの方です。

普通にそのへんのスーパーでべに花油を購入した場合、たいていそれはハイオレイックタイプのものだと思います。ハイオレイックタイプのものはシーズニングにはあまり適した油ではありません。

特に理由がない限り、次に挙げるグレープシードオイルのほうが入手のしやすさなどを考えても良いのではないかと思います。

グレープシードオイル

上記引用の一部でも述べられていますが、グレープシードオイルはいい結果を出しています。グレープシードオイルが最も被膜が長持ちするという報告もありましたね。
亜麻仁油のような問題を報告している例は見つかりませんでした。

ヨウ素価が高い乾性油であり、大抵のスーパーでさほど高くない価格で手にはいります。(もちろん普通のサラダオイルと比べるとけっこう高価です)
いやな匂いもなく普通にサラダにかけたりして美味しくいただけるものなので、無駄になることも無いでしょう。

僕としては、シーズニングにつかうなら、このグレープシードオイルが良いのではないかと思います。

僕個人の考えですが、わざわざシーズニングのためだけに買ってまでしてグレープシードオイルを使うこともないかとは思います。皮膜を作るだけなら他の油でもできると思いますので。
※ ただ、新しいスキレットを購入したときなんかは、より良いと思われる方法でやっておきたくなりますよね。。

ダッチオーブンの雄であるLODGEの製品はシーズニング済みで販売されていますが、このシーズニングには大豆油をつかっているようです。
先にまとめた評価らもわかるように、大豆油のヨウ素価もグレープシードオイル等と同様に結構高いですね。アメリカでは大豆油のコストも安そうですし。

パンやお菓子作りなどで使われるショートニングをシーズニングに使うケースもあるようですが、これもわざわざ使うメリットはありません。
ショートニングは、食用油(大豆油など)に水素を添加することで、あえて炭素の二重結合を減らしたものです。そのためヨウ素価は100以下と低いものです。
つまり、理屈上はすごく重合化しにくい材料です。

動物性の油脂もそうですが、一般的に室温で固体の油は炭素の二重結合がない(飽和脂肪酸)あるいは少ないです。
マーガリンもショートニングと同じく、わざと炭素の二重結合を減らして植物性の油(液体)を固化しているものです。

シーズニングの方法

ここでは、シーズニングによる被膜の正体がわかったところで、その被膜を形成するための方法について説明していきます。

以下がシーズニング方法の例となります。

  1. ダッチオーブン/スキレットを洗剤とタワシなどつかってしっかり洗う。
    ここは、出荷時にコーティングされている錆止め剤等を除去するため、ゴシゴシしっかりと洗う必要があります。
    ※ 錆止めの除去方法は、錆止めの種類によって異なります。購入したスキレット/ダッチオーブンに錆止めの除去方法か説明されているはずですので、その方法に従いましょう。たとえば、洗剤で洗う前に高温で焼き切らなければならない錆止めコーティングなどもあったりします。
  2. 水を拭き取り、コンロの火などをつかって完全に乾かす。
    この時点でまだ被膜は出来ていませんから、非常にサビに弱い状態です。
    そのへんに放置して自然乾燥を待つのではなく、できるだけはやく完全に乾燥させましょう。
  3. 表面全体に薄く油を塗る。
    被膜をムラなくしっかり形成するため、油を薄く均一に塗ることが重要です。
    ※ 先に説明したように、被膜の形成には酸素が必要です。つまり油が空気に触れるようにして加熱することが短時間でしっかりした重合膜を形成するポイントです。
    • しつこいですが大事なことなので。。。
      ここで手抜きしようと思って油を厚めに塗ってしまうと、油の重合化(酸化)が中途半端になってべたべたしたものになってしまいます。こうなっちゃったら、いったん洗剤でこれをしっかり落としてからやり直したほうが早いです。
  4. 全体をなるべくムラなく熱する。
    理想的には、オーブンに入れて200℃~250℃程度で30分~1時間くらい焼きます。(最適な温度・時間に関しては諸説ありますが、直接強火に長時間晒すのは温度が上がりすぎ、皮膜形成に必要な多くの油が飛んでしまいます。)
    オーブンに入らないものは、ガスコンロ等でも問題ありません。ちょっと大変ですが、一箇所だけが高温にならないよう動かしながらしっかり全体をムラなく加熱する必要があります。やけどに注意しましょう。
    煙が出始めたら、それ以上温度が上がりすぎないようにして数分以上キープすれば(少なくともグレープシードオイルなら)OKだと思います。
  5. ダッチオーブン/スキレットが冷めたら3に戻り、この作業をできれば3-4回繰り返す。

黒錆は必要?

上記手順の2と3の間に、スキレット/ダッチオーブンを高温に熱して(から焼きして)黒錆(Fe3O4)の膜を作ることでさびにくくするように推奨している説明も見かけます。

これについて、個人的にはシーズニングをちゃんとしておけば不要だと思っています。
なぜならちゃんとシーズニングすれば、表面は重合油の膜で覆われるので錆びることはないからです。

実際自分はこの作業はしていませんし、これまでここで説明した方法によるシーズニング済みのスキレットが錆びたことはないです。

コメント

黒錆を表面につけておけば、サビない(赤錆が発生しない)と言われていることが多いです。
実際のところは、おそらく何もしないよりはずっとましですが、黒錆をつけても錆びます(赤錆がでます)。

というのも、コンロで過熱して作った程度の黒錆の層ではミクロに見ると穴だらけであり、酸素も水蒸気もそこに入り込みます。なのでそこから錆びていきます。
※ 黒皮鉄板(黒錆の鉄板)のフライパンなどでも、出荷時にはラッカーや蜜蝋などの錆止め処理が施されているのは、そうしておかないと「錆びる」からです。

そのため、黒錆の層をつけたところで、錆びないようにするためには結局油の力を借りる必要があるのです。
つまり、黒錆の層の穴/隙間を油(あるいは重合油)で埋める必要があるということになります。

くず野菜を炒める必要ある?

これもわりと言われていることに、「シーズニングの前あるいは後にくず野菜を炒める」なんていうのがあります。
中には、使う野菜は香味野菜がよいなんていう話もありますね。

これについては、僕は不要だと思っています。というか、必要な理由が思いつきませんし、納得できる理由を見たこともありません。

よくあるのが、「鉄のにおいを消すため」という説明ですが、さすがにそれはないと思います。

まず、そもそも鉄に臭いはありません。なぜなら鉄は揮発しません(気体にならない)ので。。
鉄臭いっていうのは、鉄イオンと有機物が反応してできる物質のにおいだそうです。

つまり、鉄と食材が接触して初めて出てくる匂いです。

ここまでくればもうお分かりかと思いますが、
シーズニングによる被膜があれば、鉄と食材は接触しないので、この臭いはしません。
もし鉄臭かったらシーズニングが不完全なことを疑いましょう。

実際にやってみればわかると思いますが、「ちゃんと」シーズニングすれば鉄臭くはならないです。

コメント

なぜくず野菜炒め説が出てきたのか、本当のところは知りませんが、そこには先人の知恵があるのではないかと想像しています。

くず野菜を油でよく炒めるということは、つまり油を酸素に触れさせながら過熱しているということですね。
これは、シーズニングをしていることに他なりません。

新品の鉄製品でくず野菜をいためることにより、意識せずとも薄い重合膜が形成されるため、おのずと鉄臭さがなくなるということが経験的に知られるようになったのではないかと想像しています。
昔は重合油の被膜なんて考えもしなかったでしょうから。

ただ、ここまでの説明でわかるように、シーズニングをするという前提では、このくず野菜炒めは特に意味のあるものではないと思っています。

シーズニングの温度と時間

シーズニングに適した温度や時間は諸説あるようです。
シーズニングの際に加熱をするのは、あくまでも油の重合反応(後章で説明します)を加速させるためなので、さほど厳密に考えなくても良いと思います。(後に述べるように、適切な油を使えば時間はかかりますが室温でも重合化は進みます)
Wikipedia(英語版)には以下の記述があります。

The temperature recommended for seasoning varies from high temperatures above 260 °C (500 °F) to temperatures below 150 °C (302 °F).Some say that a temperature around the smoke point of the oil or fat should be targeted since this will allow vaporization of the lighter hydrocarbons from the oil, leaving behind heavier molecules for optimal polymerization or carbonization to occur. There is also no consensus on the correct duration of heating: from half an hour to an hour is often recommended.

Wikipedia : Seasoning (cookware)より引用

(翻訳)
シーズニングに推奨されている温度は、260℃を超える高温から150℃未満の温度までさまざまです。
油の煙点(注:油が熱せられて煙を上げ始める温度)付近の温度を目標にすべきだ言う人もいます。そうすることで、油から軽い炭化水素が気化し、より重い分子が残り、最適な重合・炭化が発生するためです。
また、最適な加熱時間についての定説もありません。よく推奨されるのは、30分から1時間です。

150℃~260℃というと、ガスコンロで熱せられたフライパンがだいたいそのくらいの温度ですので、ちょうど良さそうですね。
時間も30分から1時間とのことです。

上にも書きましたが、オーブンに入るようなスキレット等であれば、オーブンでやるのが良いと思います。適温でむら無く熱することができるので簡単で失敗が少ないと思います。
大きなものはカセットコンロなどをつかって屋外でやるのがおすすめです。コンロでやる場合は煙がだいぶ出ますので。
※ 煤(すす)が多いので焚き火はおすすめしません。煤が少ないのでガス火のほうがいいですよ。

TIPS

最近見つけたのですが、サクサクキャンプ【焚き火飯】さんがYouTubeに上げている動画の参考サイトとして当記事をあげていただいていました。
※ とてもうれしいことです。参考サイトをちゃんと示してリンク貼ってくれる方って滅多にいないんですよね。。

この動画はシーズニングの方法がよくまとまっていると思います。当記事の冗長加減にうんざりな方は必見だと思います。

ところで、その中でシーズニングのための加熱に魚焼きグリルを使っています。これはナイスなアイデアだと思います。

加熱時間についても、僕の経験では15分くらいで油は固まっています(少なくとも後に説明するグレープシードオイルを使った場合)。それでも一応30分は加熱していますが。

シーズニング後の普段の手入れ

鋳鉄の被膜は、シーズニングのときだけではなく、普段の使用中や使用後の手入れによっても成長していきます。

こうして被膜を成長させることにより、より食材が焦げ付きにくく、油がよく馴染む使いやすいものになっていくのです。

使用後は、鋳鉄をサビから守るのと、被膜を成長させるための2つの目的で手入れをする必要があります。以下にその方法を説明します。

  1. 汚れを落とす。
    皮膜を傷めないため、基本的にゴシゴシ強くこするような洗い方はしないようにします。
    できればぬるま湯を使って少量の洗剤で優しく洗います。とくに洗剤を使った後は、水でしっかりすすぎましょう。
  2. 水を拭き取り、完全に乾かす。
    次の工程の前にしっかり乾かすことが重要です。コンロの火にかけて無理やり乾燥させることを推奨します。
    ※ 表面にはミクロの凹凸などがあるので、その中に入り込んだ水もしっかり乾かすためです。
  3. 全体に油を薄く塗って保管する。
    シーズニングのときと同様、薄く均一に塗るのがポイントです。
洗剤は使ってはいけないとよく言われていますが、シーズニングが正しく出来ていれば洗剤を使っても問題ありません。シーズニングの被膜は洗剤に溶ける油ではなく、樹脂なので大丈夫です。

この後の実験でもわかるように、シーズニング等で形成される被膜は洗剤で落ちるようなものではありません
衛生上の理由からも良質な被膜を成長させるためにも、下手に汚れが残った状態にせず、きれいにした上で清潔な油を塗ることの方が大切です。

比較実験 : 油によって違いがあるのか比較してみた

せっかくここまで書いたので、実際に油による違いが本当にあるのかどうか、実験してみました。

実験に使ったのは、この15cm径のスキレットです。

スキレット

写真では真っ黒に見えますが、実際にはサビ防止剤を落として鋳鉄がむき出しの状態です。

ホームセンターでたたき売りしていたのを以前買ったまま未使用だったものです。(おもわず2台買って、1台だけたまに使っていました)
下の木の台もセットで400円ほど。まあまあ安いでしょ?

そして、実験に使った油たちがこちらです。

油

左からキャノーラ油(菜種油)、オリーブ油(エクストラバージン)、グレープシードオイル、亜麻仁油です。

これら4種類の油をスキレットに薄く塗ります。

シーズニング

これも写真ではわかりにくいのですが、それぞれの油を4箇所に分けて塗りました。

そして、これを200℃のオーブンで30分加熱して1回目のシーズニングを終えます。

結果、見た目は上記の写真と変わらなかったので写真は省略します。

さらに、同じ工程を2回(ここで次に述べる違いが見えてきました。写真ではわからなかったのでここの写真も省略します)、3回と繰り返した結果が以下の写真です。

シーズニング3回目

これも僕の撮影技術ではほとんどわからないのですが、肉眼ではもっとそれぞれの油の違いが見えています。

まず、亜麻仁油が一番テカっています。僅差でグレープシードオイルです。
そして、亜麻仁油やグレープシードオイルとは明らかに違いがわかるレベルでキャノーラ油、キャノーラ油とは僅差でオリーブオイルの順になりました。

黒光りしている順を整理すると、亜麻仁油>グレープシードオイル>>キャノーラ油>オリーブオイルとなりました。

手で触った感じはどれも一緒、写真を撮り忘れましたがどれも同じように水を弾きました(鋳鉄が露出している取っ手は水を弾きません)。なので、どの油も被膜自体はちゃんと出来ていると思われます。

油(特に亜麻仁油、グレープシードオイル等の乾性油)を拭いたキッチンペーパーなどをそのまま丸めて捨てるのは危険です。
油が酸化する際には熱を出します。乾性油は酸化しやすいので、丸めたキッチンペーパーに酸化熱がこもり、火が出る恐れがあります。
参考 : 八尾市ホームページ
油を拭いた紙は、ゴミに出すまで水につけておいたりすると良いようです。

次に、形成された皮膜の強度を確認するため、食器用洗剤と柔らかいスポンジで優しく洗ってみます。

スキレット洗浄

結果、若干残っていた油感はスッキリしましたが、被膜には何も変化なしです。なので写真もなしです。

さらに今度は、洗剤とタワシでゴシゴシと擦りました。これは被膜を剥がす気でやりました。

スキレット洗浄

結果、これも変化なしです。やっぱり多少の洗剤を使うのは問題なさそうです。

ここで、重合油はアルカリに弱いとどこかで見たのを思い出したので、重曹を使いました。

重曹とタワシで、これも剥がす気でゴシゴシやりました。

スキレット洗浄

結果、オリーブオイルの皮膜がなくなってしまった。。。
キャノーラ油は、まだらに残っている感じで、グレープシードオイルと亜麻仁油は変化無しです。

スキレット洗浄

本当に写真が下手ですいません。
右半分(グレープシードオイルと亜麻仁油)は見た目の変化がないのですが、オリーブオイルはほとんどなくなってしまっているんです。

その後、全部剥がすつもりで引き続き重曹+タワシで頑張りましたが、キャノーラ油もすべてなくなったところで力尽きました。このとき、やはりグレープシードオイルと亜麻仁油は見た目での変化は有りませんでした。

少なくとも今回実験した環境では、亜麻仁油とグレープシードオイルは強固な皮膜を形成し、オリーブオイルの皮膜は比較的弱いものであるという結果でした。
この結果は、あくまでも200℃のオーブンで30分加熱するという条件で行った場合のものです。
温度や加熱時間が違えば、結果も変わる可能性はあると思います。

追記

実は上記実験中、もう1枚のスキレット(これはシーズニングせずにたまに使っていただけのもの、まともな皮膜は出来ていなかった)を、本命と考えていたグレープシードのみを使って全体にシーズニング処理を施していました。

上記の処理を4回繰り返した後、最後にもグレープシードオイルを薄く塗った状態で1週間室内においておいたものが以下の写真です。

スキレット シーズニング後

写真ではわかりにくいものの、肉眼では明らかにシーズニング前とは違います。

色は真っ黒になり、表面はテカテカしています。まさにブラックポットという感じです。
見た目は油のテカリのような感じですが、実際にはプラスチックのような感じで、触ってみても油っ気はありません。

やはり、乾性油なので室温でも数日で重合化し、油感はなくなるようです。こういったあたりもオリーブオイルを使うよりも良い点ではないかと思います。

追記の追記

このスキレットを1年弱使ってみましたが、とくに被膜に変化は見られません。毎回使用後は合成洗剤とスポンジで普通に洗い、基本的にグレープシードオイル、グレープシードがないときは普通のサラダオイルを薄く塗って保管しています。

1年弱とはいっても、2020年はキャンプは完全自粛にしたので、自宅で炭火(七輪)or カセットガスコンロで10回も使っていないくらいですが。。

まとめ

鋳鉄ダッチオーブン/スキレットなどのシーズニングには、グレープシードオイルを使うのが良さそうです。

見た目上は亜麻仁油のほうが少し良さそうですが、剥がれやすいという報告があるのであえて使うほどの差がグレープシードオイルとの間にあるわけではないと思います。

今回始めて亜麻仁油を味わってみましたが、個人的には、グレープシードオイルの味のほうが好きです。っていうか亜麻仁油ってまずいのね。。。
わざわざ高価な亜麻仁油はいらないかな。。
※ ちなみに、サラダにかけました。乾性油ってほかの使い方知らないです。。

キャノーラ油、オリーブオイルでも皮膜は出来ましたが、耐久性(少なくとも重曹に対する耐性)はグレープシードオイルに劣るようです。

(ちゃんととシーズニングができていれば)洗剤で優しく洗う分には問題ありません。実験ではタワシでゴリゴリしても大丈夫でしたからね。

重曹は使っちゃダメ。これは少なくともオリーブオイルとキャノーラ油による皮膜を破壊しました。

後日、こんなこと↓もやってみましたよ。

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コメント

  1. スキレットマン より:

    最近シーズニングにグレープシードオイルなんていう話を見かけて気になっていたのですが、きっとここが元ネタですね (^o^)

    大変わかりすく納得感のある説明で、いろいろと目からウロコです。
    洗剤OKとか野菜炒め不要とか、最初はただの逆張り記事かと思いきや、ちゃんとすべて科学的に立証されていたのは衝撃でした。

    • KANIKANI より:

      コメントありがとうございます。
      本文中にもあるように、グレープシードオイルの元ネタはアメリカの人たちです。
      あちらには古いスキレットなどコレクションするガチの人たちがいて、こだわりが違うみたいですね。

  2. ジャパニーズワッフルが好き より:

    ホットプレートのテフロンが剥がれてきたので、再生方法を探していてこの記事にたどり着きました。
    以前南部鉄器のワッフル焼型を購入した時に、クズ野菜をオリーブオイルで炒めた事を思い出しました。
    その時にこの記事を読んでいれば…、と思いましたが、焼型を購入したのは2020年の2月なので、まあ今に至ってないと読めなかったのかなと。

    最近焦げ付きが目立つようになってきたので、焼型の表面も劣化してるんだなぁと思い、よい機会なので一度リセットしてグレープシードオイルでシーズニングし直してみます。

    スキレットもいずれ(ホムセンで投げ売りされてたら即)買う予定なので、4分割で違う種類の油でシーズニングして、実際目玉焼きを焼いて焦げ付き具合なんかも見てみたいですね!

    大変参考になる記事をありがとうございました。
    楽しいキャンプライフを送られることをお祈りしております。

    • KANIKANI より:

      コメントありがとうございます。
      本記事を書いてから2年半くらいたちますが、このときにグレープシードオイルでシーズニングしたスキレットは、被膜がはがれることもなくまだ現役です。
      もともと投げ売りスキレットだったのですが、今は愛着がわいて大事に使っています。
      ぜひ投げ売りスキレットを見つけてみてください。ぶっちゃけ、シーズニングしてある程度使って育てちゃえば高価なものと変わらないです。。

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