炭火焼がおいしい理由を解説

こちらの投稿で、僕は炭火焼(バーベキュー)がおいしいと思っていることについて述べました。

どちらも食材を加熱して焼くだけなのに、なぜ味(食感)に違いが出るのでしょう?

炭火とガス火の違いについて説明します。

炭火のほうがおいしい?

こちらの投稿で述べたように、僕は肉や野菜を焼くなら、炭火のほうが好きですね。

じゃあ、炭火とガス火のどっちがおいしいの? ってことになると、それは人それぞれの好みじゃないのかなあとしか言いようがありませんね。

ただ、最近の焼肉屋さんなんかでは、炭火を使っているところはそれを売りにしていたりしますし、わざわざ炭をガス火であぶって使っているようなところもありますね。

やっぱり、炭火のほうがおいしいと感じる人が多数派なのではないかと思います。

それでは、なぜ炭火とガス火でおいしさの違いが出てくるのでしょう?

加熱方法の違い

焼き上がりに違いの出る一番大きな要因がこれだと思います。

炭火とガス火(あるいは鉄板焼き)では、食材が加熱されるメカニズムに違いがあります。

熱の伝わり方には、熱伝導・対流・輻射があります。それらの違いを簡単にまとめると、以下のようなものです。

    • 伝導(熱伝導) : 温度が異なるもの同士が接触している場合に、温度が高いほうから低いほうへ熱が伝わる
    • 対流 : 熱を持った流体(例えば空気や水など)が移動することにより熱が伝わる(例、上昇気流など)
    • 輻射(放射) : 熱エネルギーが電磁波(マイクロ波、赤外線など)によって伝わる

そして、炭火とガス火の大きな違いは、「炭火は輻射で熱を伝える」のに対し、「ガス火は対流・熱伝導で熱を伝える」というものです。
炭火は炎をほとんど出さず、(遠)赤外線を多く放出するため、ガス火に比べて輻射で伝える熱量が多くなります。

例えば、バーベキューなどの時に、炭火に近づくだけで顔が熱くなりますが、ガスコンロなどの場合、炎に同じくらいの距離まで近づいても、そのようなことはありませんよね?
近づいただけで顔が熱くなるのが、炭火から放射された赤外線による加熱のためなのです。

この熱の伝え方の違いが、食材を焼き加減に大きく影響します。

炭火 : 輻射熱で加熱

炭火の場合、食材に赤外線があたっている部分が加熱されます。
この加熱は、赤外線のエネルギーにより、材料中の分子が振動することにより、食材が加熱されます。
炭火よりも身近な例では電子レンジ(電子レンジは赤外線ではなくマイクロ波の輻射です)がおなじ原理で加熱しています。

そのため、炭火焼の場合、食材には赤外線による熱が常に供給され続けます。
赤外線は、食材にかなり良く吸収されるため、食材の赤外線があたっている部分の表面は一様にムラなく焼けることになります。
遠赤外線が浸透し、食材の内部から加熱するかのようなイメージを持っている方もいますが、これは物理的に間違っています。ただ、電子レンジで使うマイクロ波は比較的内部まで浸透し、外側と同時に内部も(内部”から”ではなくて内部”も”)直接加熱します。

赤外線に当たった瞬間から、食材には輻射による熱がどんどん供給されつづけるため、食材表面の温度は比較的短時間で上がり、内部の水分を保ったまま、表面がカリッとした仕上がりになります。
内部まで火が通りやすいのは、食材表面に供給される熱が(ガス火などと違って)一定のため、表面からの伝導する熱量も比較的高くなることが理由と思われます。

また、赤外線があたっていさえすれば加熱されるため、多少の凹凸があっても表面全体をムラなく焼くことができます。

ガス火等 : 熱伝導で加熱

ガス火等による食材の加熱は、主に食材の内外の温度差による熱伝導によって行われます。

例えば、熱い鉄板に食材をのせた場合、鉄板に触れた場所から食材と鉄板の温度差に応じて熱が伝わります。
直火の場合は、対流によって運ばれてきた熱い空気と食材が触れる場所からの熱伝導になります。

ここで、熱伝導の性質を考えると、供給される熱は食材の温度によって変わります。
つまり、食材が加熱されれば加熱されるほど供給される熱は少なくなり、例えば温度が200℃の鉄板においた食材は、その温度が200℃を超えることはありません。

また、熱伝導は外部と触れている部分との温度差によって供給される熱の量が変わるため、表面に凹凸がある食材を鉄板に置く際など、鉄板に触れる場所とそうでない場所に焼きムラができることなります。

 

このように、炭火とガス火等による加熱のメカニズムの違いにより、焼き具合に違いが出てきます。
常に一定の熱を供給する赤外線による加熱が、食材の外側をカリッと、かつ中まで火を通しつつもジューシーに仕上げることになり、多くの人がおいしく感じる焼き加減になります。

香りの違い

炭火焼きの香りが好きだという人は多いと思います。
炭火風味の焼肉のたれなんて言うのもあるくらいですからね。

この炭火の風味(香り)は、食材から滴る脂分などが炭に落ちることによって出てくる煙によるものです。
僕の場合は、煙が多すぎるのはあまり得意ではないのですが、ほんのちょっとだけ燻されたものはやはりおいしいと感じます。

それと、食材そのものにつく風味のほかに、焼いているときに漂ってくるこの香りが食欲を刺激しているようにも思います。

ガス火は水分を含む

ガス火は水分を含むから、カリッと焼けない。っていう説もよく聞きます。

これは僕は個人的には疑問です。
べつにガスでもカリッと焼けると思うんですよね。炭火との違いはふっくら感だと思っています。

まず、「ガス火は水を含む」これは間違いありません。
炭の主成分は炭素(C)なので、燃えると二酸化炭素(CO2)になります。
一方、ガスの主成分である、メタン・ブタン・プロパン等は、炭素(C)と水素(H)の化合物なので、燃えると、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になります。

それでは、ガス火に含まれる水蒸気が食材をべちゃべちゃにするのかというと、それはどうかなあと思っています。

食材が冷たい最初のうちは、確かに多少結露があると思います。

そもそも水蒸気を含む空気で加熱するとべちゃべちゃになるんだったら、シャープのヘルシオなどの加熱水蒸気による調理でから揚げがカリッとできる理由がわかりませんよね?

まとめ

炭火焼きがガス火等を使う場合よりもおいしくなる理由をまとめます。

炭火は赤外線の輻射熱によって食材を加熱するため、短時間で食材の表面をムラなくカリッと焼くことができる。

炭火に特有の風味がおいしく感じられる。

ガス火は水蒸気を含むので、カリッと仕上がらないという説もある。

 

もちろん、炭火の場合は火加減の調整が簡単でない等のデメリットもあります。

こちらの投稿では、炭火を使う際のコツについても少し述べているので、興味のある方は参照してみてください。

コメント

  1. ひかる より:

    コメント失礼します。

    科学的な根拠に基づいた解説が、大変分かりやすく勉強になります。ありがとうございます。

    ひとつ質問があります。

    熱源は炭火でも、食材を鉄板やスキレットで焼けば、それは「対流・伝導」による熱である鉄板焼になりますか?

    たとえば、ユニフレームの『ユニセラ』を使い焼き鳥を焼く場合。熱源は炭火です。
    まず、オプションの『焼き鳥台』というものを用いて、焼き鳥を空中に浮かせて焼く場合。これは完全な炭火による輻射熱。
    これに対して、ユニセラに鉄板を乗せて、その上で焼き鳥を焼く場合。鉄板の熱で焼かれるので、これは輻射熱ではない。
    これで正しいですか?

    なお、網で焼いた場合は、基本は輻射熱ですが、肉に網が触れている部分は熱くなった網の熱が肉に伝わるため、「輻射熱+対流・伝導熱」なのでしょうか?

    • KANI より:

      ひかるさん、コメントありがとうございます。

      ご理解の通りで正しいと思います。
      熱輻射は金属を通り抜けることはありませんので、鉄板やスキレットを使う場合はいわゆる「鉄板焼」になりますね。
      この場合も、熱くなった鉄板やスキレットからもある程度の輻射熱は出ると思いますが、燃えている炭と比べるとほんの僅かな量だと思いますので、殆どは「対流・伝導」による熱の移動かと思います。

      網焼きの場合、網自体からの伝導はたしかにありますね。網の跡の焦げ目がついたりするのは、伝導熱によるもののはずです。

      ユニセラは僕も使っていますよ。作りがしっかりしているし、コンパクトでいいですね。

  2. 匿名 より:

    KANIさん

    回答ありがとうございました。
    おお……! やはりそうでしたか。
    ずっともやもやしていた疑問だったので、頭の中が整理できてすっきりしました。
    分かりやすい解説、誠にありがとうございました!

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