スリーピングパッドのアルミ面は上下どっち?
キャンプギア
2021.03.192024.06.02
銀マットやサーマレストに代表されるアルミ加工付きクローズドセルスリーピングパッド(寝袋マット:ウレタンマットとかEVAマットとか言われることもあるやつ)のアルミ加工面は上にするのか下にするのかって、迷いませんか?
実は、メーカーによって(あるいは同じメーカーでもメーカーと日本の代理店によって)違うことを推奨していたりします。
僕の考えは「どっちでも体感できる違いは無いし、好きな方でいいんじゃないの?」 なのですが、改めて少し調べてみたので紹介します。
ちなみに、現在僕が所有しているのは、サーマレストのZライトソルとWIDE SEAという中華ブランドの格安パッド(片面アルミ加工)です。
実際使ってみて「体感できる違いなし」と考えているのは、サーマレストの方を使用した上での個人的な感想です。
そもそもアルミ面って何のためにあるの?
サーマレストのサイトによると、以下の説明があります。
the Z Lite SOL expands upon the utralight performance of the Original Z Lite by adding our reflective Thermacapture
Our proprietary reflective coating radiates heat back to your body and prevents heat loss, saving you energy for tomorrow’s adventure.
” data-original-title=””>ThermaCapture™ coating to capture radiant heat and increase overall warmth by nearly 15%.
(翻訳) Zライトソルは、反射熱を捉えて暖かさを15%向上させる反射コーティング(ThermaCaptureTM )を付加することにより、オリジナルのZライトがもつウルトラライト性能を拡張します。
Therm-a-Rest Z Lite SOL Sleeping Pad より引用&筆者翻訳
これだけだとちょっとわかりにくいですが、アルミの層が熱(輻射熱)を反射するので何も無いより15%暖かくなる という意味だと思います。
輻射熱(放射熱)とは、物質からその温度に応じて放出される電磁波(主に
赤外線 )によって伝わる熱のことです。
温度によって電磁波が放出されることを、熱輻射(熱放射)と言います。太陽から熱が真空の宇宙空間を伝わってくるのは、この輻射熱によるものなのです。
コロナのせいでよく目にするようになった非接触の体温計なども、この熱輻射から体温を測っているのです。
アルミに限らず、金属は場合輻射熱をよく反射します 。 特に表面が鏡面のような金属面は、90%以上の輻射熱を反射します。 そして、多くの物質(金属は反射はするけど輻射は少ししかしない)は、温度に応じた赤外線を発し、これが輻射熱というものの正体なのです。 ※ ちょっと乱暴で厳密性に欠ける説明です。正確に知りたい方は「輻射熱」等でググって下さい。
そして、Zライトソルの場合、このアルミ層により、暖かさが15%向上するという主張です。
メーカーや代理店の推奨は?
それでは本題に入ります。 メーカー(代理店)ではどっちを上向きにして使用することを推奨しているのか、確認してみます。
サーマレスト Zライトソル : メーカー(Cascade designs, Inc.)
まず、サーマレスト (Therm-a-Rest : Cascade Designs, Inc. のブランド名)の本家による説明です。
WHICH SIDE IS UP ON A Z LITE AND OTHER BURNING QUESTIONS
— (略) —Which side is up on my Z Lite? Answer: Silver side up. — (略) — The pad uses dual-density foams: a durable yellow bottom and a softer silver top. We designed it this way to maximize comfort, durability, and warmth. The yellow side uses this tougher foam, enduring the rigors of the backcountry while providing a barrier between you and the cold ground. The softer silver side is more comfortable and supportive. This side is silver because it uses our ThermaCapture finish, reflecting radiant body heat back to you.
(翻訳) 私のZライトのどちらの面を上にすれば良いのですか? 答え : シルバー面が上です — パッドは、密度が違う2つのフォームを使っています : 耐久性かある黄色の裏側と、柔らかい銀色の表側です。快適性・耐久性・暖かさを最大限にするためにこのように設計されています。黄色の面は丈夫なフォームを使用しており、体と冷えた地面の間にバリアを張り、バックカントリーの厳しさに耐えることが出来ます。柔らかいシルバー面はより快適でサポート力があります。この面は我々のThermaCapture仕上げにより体の熱からの輻射熱を反射して自分自身に戻すために銀色になっています。
Therm-a-Restブログページ より抜粋引用
サーマレストのZライトソルの場合、メーカーはアルミ面を上にすることを推奨 しています。
ところで、アルミ面の方がフォームが柔らかくて快適 なんていうのは知りませんでした。実際に使ってみても、改めて触って確認してみても、硬さの違いはわからない です…
むしろアルミが無い面のほうが肌触りはいいですね…
サーマレスト Zライトソル : 日本代理店(モチヅキ)
一方、同じ製品でも日本の代理店の説明はこうです。
Zライトソル、どっちが上?下?
お馴染みのサーマレストのZライトですが、よくどちらの面が上側と質問されることがあります。
答えはどちらが上でも問題はありません。 使い分けるわけなんですが、寒いときはアルミ蒸着面を上にします。断熱性が向上し、また自身の体温がアルミに反射することでまた暖かくなります。 逆に暑いときは地面側にアルミ蒸着面を向けます。体温による保温効果をなくします。ビーチなど砂が暑い場合は下からの熱を跳ね返す役目にもなります。とは言っても完全には下からの地熱を遮断するわけではありませんのでご承知ください。軽減です。
モチヅキ ブログベージより引用 このページは消えてしまいました。ブログ無くなった?
こちらは、「寒いときはアルミ面が上、暑いときはアルミ面が下」 ということですね。 メーカー本家が主張している、アルミ面のほうが柔らかくて快適云々の説明は無いようです。
NEMO Switchback
サーマレストほどメジャーではありませんがこちらのNEMO Equipment (「ニーモ」って読みます)もアメリカの大手アウトドア用品メーカーです。
ここのSwitchbackというスリーピングパッドもZライトソルと同様、アルミ面のついた折りたたみ式のクローズドセルマットです。これはおそらくサーマレストのZライトソルの次くらい人気のある製品です。
こちらは簡単なFAQくらいしか見つかりませんでした。 ※ ただし、Switchbackの説明動画等を見ると、ことごとく下記の説明のように(つまりアルミ面を下にして)使用しています。
If the reflective surface is supposed to reflect body heat, is this side meant to be slept on? If so, why is the logo embossed on the orange side?
Hi there! The side to sleep on is the orange side. The metallic film on the opposite side catches released heat and reflects it back to your body. Hope that helps!
(翻訳) 反射面が体の熱を反射するということは、この面に寝るということですか? もしそうならば、なぜロゴはオレンジの面にあるのですか?
こんにちは! 寝るのはオレンジ色の面ですよ。裏面の金属フィルムが放出された熱を捉えてあなたの体に反射します。お役に経てたら幸いです!
NEMO 商品ページFAQ より引用
というわけで、サーマレスト本家とは反対に、アルミ面を下することを推奨 しています。
実際、サーマレストはアルミ面にロゴが入っており、NEMOはアルミの無い面にロゴが入っているのですよ。
ところで、このNEMOの説明、言っていることはわかりますか? 「体の熱を反射するのがアルミフィルムなら、やっぱり正解はアルミ面が上なんじゃないの?」って思っちゃいますよね?
正解は、「アルミ面が上だろうと下だろうと、体から出た熱の一部 は反射してくる 」ということになります。
ググってみた感じでもこのあたりについて誤解している人が多いように思うので、ごく簡単に説明しておきます。 ※ 興味ない人、そんなこと分かっているよって人は飛ばしたほうがいいです。
地面からの湿気が云々っていう説明を見ることもありますが、これはあまり気にしなくていいと思います。
まず、
テントの中に敷く場合は地面からの湿気は関係ありません。 テントのボトムは湿気を通しませんので。
それと、
クローズドセルパッドはそれ自体が防水性が高く、湿気を通しません。 空気すら通さないのがクローズドセルフォーム(独立気泡フォーム)ですからね。
アルミ面が体から出た熱を反射する?
いろいろなところで、「アルミ面が体からの熱輻射を反射する」っていう書き方をしていますね。
そのため、「アルミ面を上にしたら熱を反射するけど、アルミ面が下だと反射しない」と誤解 している 人もいるかと思います。
実際にはそういうわけではありません。 上で引用したNEMOの説明にも、「裏面の金属フィルムが放出された熱を捉えてあなたの体に反射します」ってありますね。
そもそも、裸で寝ているのでもない限り、人体から出た熱輻射(赤外線)が直接アルミ面に届くわけではありません。
体から出た輻射熱のほとんどは、着ている服なり寝袋なりに吸収されます。 そして、輻射熱を吸収することにより服なり寝袋なりがあたたまると、そこからまた輻射熱が出るということです。
アルミ面を上にすれば、寝袋からの輻射熱を反射しますし、アルミ面が下なら寝袋からの熱伝導で温まったマットの発泡樹脂からの輻射熱を反射 します。
それでは、アルミ面が上だろうと下だろうと関係ないかと言うと、そういうわけでもありません。
熱輻射というのは、(素材が同じであれば)温度が高いほうが大きくなります。 つまり、地面が体温よりも低い場合、体に近いところのほうが温度が高いため熱輻射が大きいです。 ※ 寝袋の生地もマットのフォームも大抵はポリエチレンなので、熱輻射の大きさは同じものと仮定します。
つまり、理屈の上では、アルミ面を体により近い上側にしたほうが、反射される熱量は大きい ということになります。
実際には、体から出る熱は、輻射以外にも熱伝導(温度が高いところから低いところへ熱が伝わること)で伝わる分も多いです。
熱伝導まで考慮するとかなり複雑になってくるので、ここでは輻射熱だけを考慮しました。
ちなみに、アルミは熱伝導が非常に大きい素材ですが、マットのアルミフィルムは非常に薄いので、その影響は無視できるくらいだと思います。
「理屈の上では」と書きましたが、実際に寝袋に入って寝た場合、アルミ面の上下による違いは(少なくとも僕には)体感できません。 ※ 実際に同じ条件で比較してみたことがあるわけではなく、あくまでも経験からの感触です。
登山などでは、マットを寝袋の中に敷く人もいます。 これは、暖かいところ(体の近く)でより多くの輻射熱を反射させるという意味でもリーズナブルなように思います。
例えば寝袋の中や下にエマージェンシーシートを敷く なんていうのは、マットのアルミ面と同じく、輻射熱を反射する効果があるわけですね。
結論は?
結論と言うか僕の個人的な見解ですが、以下のようになります。
NEMOみたいに、明らかにアルミ面を下にして使うように作られているものは、アルミ面が下 で良いと思います。
サーマレストは、メーカーと代理店で言っていることが違うくらいですから、どちらでもいい のではないかというのが僕の考えです。
理屈の上では、寒いときにアルミ面が上、暑いときに下というのがいいような気もしますが、僕は最近は暑くても寒くても大抵アルミ面を下 にしています。
アルミ面よりフォーム面の方が肌触りがちょっといい ですし、サーマレストの簡単に剥がれてくるアルミ面がちょっと気持ち悪いというのもあります。 ただ、サーマレストはアルミ面を下にすると余計にアルミが剥げてくるかもしれません 。僕がサーマレストのアルミは剥がれやすいと思っているのはそのせいかもしれませんね。
もう一つ所有している、格安の中国製マットは、アルミ面の肌触りが悪すぎる(ビニールみたい)ので、アルミ面を下 にします。こっちはアルミ面の耐久性が高そうなので、下にしても剥がれにくそうです。
そして、この記事を書いていて気がついた、もう一つの結論は。。。
アルミなしの(安い)マット+エマージェンシーシートで十分かもしれない(というかそのほうが良い 面もある) ということです。寒いときはエマージェンシーシートを寝袋の中か下に敷く、地面が熱いときはエマージェンシーシートをマットの下に敷く、それ以外では使わない。 これが理屈の上では一番良さそうに思えます。 エマージェンシーシートを使えば、そこで輻射熱の大部分は反射してしまうので、マットのアルミはあまり意味がなくなりますね。それに、エマージェンシーシートは安くて軽くてコンパクトですよ。
※ 定義が曖昧な指標にもっともらしい数値で向上効果を示すやり方は胡散臭くて好きじゃないです。。。
ちなみに、ZライトソルのR値(2.0)と、アルミなしのZライトのR値(1.7)を比べると、以下のような感じです。
– ZライトのR値はZライトソルのR値より15%低い
– ZライトソルのR値はZライトのR値より約17.6%向上
このあたりの事を上記のようにざっくりと適当な書き方にしているだけかもしれませんね。確かに「R値が0.3(約17.6%)向上する」って言われてもそれはそれでイメージが沸かないですけどね。