自宅の部屋などではもちろんのことですが、キャンプでの寒さ対策等のため、テントやシェルター等の中で火を使う際に、延焼以外にも十分に気をつける必要があるのが、一酸化炭素中毒です。
当記事では、一酸化炭素の危険性と、一酸化炭素中毒のリスクを抑える一酸化炭素チェッカーについて説明します。
一酸化炭素の危険性
まず、一酸化炭素(CO)の危険性について説明します。

なぜ危険なのか?
人の体に酸素を行き渡らせるのは、赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質の一種です。
肺で取り込まれた酸素は、このヘモグロビンと結合して血液とともに体中の細胞まで運ばれる仕組みです。
このヘモグロビンですが、酸素以上に一酸化炭素と結合しやすいという性質があります。そして、一酸化炭素と結合したヘモグロビン(COHb:カルボキシヘモグロビン)は酸素と結合することができなくなってしまいます。
そのため、一酸化炭素を吸ってしまうと、体内に供給できる酸素の量が不足してしまうわけです。
この一酸化炭素は無色・無臭なので、発生していてもなかなか気づきにくいという問題もあります。
危険な濃度はどれくらい?
まずはじめに述べておきますが、一酸化炭素による影響には個人差があります。以下でも述べるように各機関から危険性の目安が公表されていますが、すべての人の安全を保証するものではありません。
一酸化炭素の濃度・時間とそれによる症状について、以下に厚労省 福岡労働局による資料(PDF)からの抜粋を示します。
CO濃度 [ppm] | 吸入時間と中毒症状 |
200 | 2~3時間で前頭部に軽度の頭痛 |
400 | 1~2時間で前頭痛・吐き気 2.5~3.5時間で後頭痛 |
800 | 45分間で頭痛・めまい・吐き気・けいれん 2時間で失神 |
1600 | 20分間で頭痛・めまい・吐き気 2時間で死亡 |
3200 | 5~10分間で頭痛・めまい 30分間で死亡 |
6400 | 1~2分間で頭痛・めまい 15~30分間で死亡 |
12800 | 1~3分間で死亡 |
ppmというのは、百万分の一分率です。つまり、1ppm = 0.0001%です。
例えば、上表で2時間で死亡に至るとされる1,600ppmは、わずか0.16%の濃度ということになります。
ここで注意したいのは、一酸化炭素による症状は、濃度だけでなく、晒される時間にも関連するということです。
つまり、一酸化炭素の濃度が低くても、晒される時間が長くなれば症状は重度になるということです。
このような危険なガスに対する、許容濃度についても各機関から公表されています。
例えば、日本産業衛生学会の「許容濃度等の勧告(2021年度)」では、一酸化炭素の許容濃度を50ppmとしています。これは厚労省も支持している指標となっているようです。
ここでいう「許容濃度」の定義は以下です。
労働者が 1 日 8 時間,週間40時間程度,肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に,当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見労働者が 1 日 8 時間,週間40時間程度,肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に,当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度
日本産業衛生学会「許容濃度等の勧告(2021年度)」より
つまり、8時間晒される場合は50ppmの濃度を許容するということです。当然8時間より長時間50ppm以上の一酸化炭素に晒されることは許容されないということになるかと思います。
また、アメリカ産業衛生専門家会議(ACGIH)は、「心疾患を患っている可能性のある人、重労働に携わっている場合、高温下、高地」においては、8時間平均で25ppm以下にすべきとしています。(国立労働安全衛生研究所:NIOSHサイトより)
その他、各機関の設定する許容値については、こちら(アメリカのガス検知器販売業者のサイト)によくまとまっています。一部抜粋すると以下のとおりです。
6ppm | WHO 24時間平均 |
9ppm | WHO他 8時間平均 |
25ppm | ACGIH 8時間平均 |
30ppm | WHO 1時間平均 |
50ppm | OSHA 8時間平均 |
WHO等が規定している8時間平均で9ppmというのは、なかなか厳しい基準だと思います。
僕の経験では、ベンチレーションを開放したスカートなしのシェルター内(要するに隙間だらけの状態)でも、石油ストーブを使うと、風が少ないときは一酸化炭素濃度は10ppmを超えてしまいます。我が家では昼間や就寝時はストーブを消すので、8時間平均では問題ないと思いますが。。
一般向けに販売されている一酸化炭素検知器も、50ppmあたりから警報が鳴るものが多いように思います。
このように、基準のブレ幅も大きく、どのくらいが無難なところはの判断は難しいところです。僕の考え(あくまでも僕の個人的な考えです)では、日本の厚労省も支持している8時間平均で50ppm以下を基本とするものの、より安全のために25ppm以下を守るようにしておこうと言うものです。
注意してほしいことは、体内の一酸化炭素量は換気をしたからと言ってリセットされるわけではないということです。換気するまでの間に蓄積された一酸化炭素はそのまま体内に残っています。
つまり、例えば室内の一酸化炭素濃度が上がったところで一旦完全に換気をして0ppmにしても、自分の体内の一酸化炭素(が結合したヘモグロビン)がなくなるわけではないということです。
定期的に換気をしていればそれで安全ということではなく、「常に低い濃度を保つため、最低でも定期的な換気が必要」ということです。できれば定期的ではなく、常時換気しましょう。
キャンプの場合はベンチレーションをちゃんと開けておく、自宅の場合は窓に隙間を作っておいたり換気扇を利用するなど、常にCO濃度を低く保つようにしましょう。
一酸化炭素はどこから出てくる?

一酸化炭素は、炭素を含む物質が不完全燃焼を起こすと発生します。
そして、大抵の燃えるものには炭素が含まれています。
さらには、大抵のものは一般的な火器では100%完全に燃焼させることは難しいです。
・・・ つまり、多かれ少なかれ、なにかを燃やせば大抵の場合そこから一酸化炭素が発生します。
よく燃える燃料類も例外ではありません、木炭や練炭を燃やすと一酸化炭素を多く出すことは知られていますが、ガスバーナー/コンロからも発生します、もちろん灯油ストーブや薪ストーブからも発生します。
※ ちゃんと設置されたちゃんと燃焼している薪ストーブの場合、ほとんどの一酸化炭素は煙突から外に出ていくと思います。
灯油ストーブの場合、できるだけ完全燃焼に近くなるように調整して使うようにしてください。(調整方法はストーブの説明書に書いてあるはずです)
燃え方が中途半端だと多くの一酸化炭素を発生させてしまいます。
特に、ガスなどのように燃焼効率が良くない薪や炭は、多くの一酸化炭素を出します。
キャンプのシェルターのような隙間だらけの空間でも炭火BBQが原因の一酸化炭素中毒事故が起こります。密閉度が高い最近の家屋内で七輪等を使う場合、いつも以上に換気に対する意識が必要となります。
一酸化炭素チェッカー

ここでは、キャンプの際に僕が使っている一酸化炭素チェッカーを紹介します。
価格が安い中国製のものを使っていることもあり、常に2つのチェッカーを同時に使用するようにしています。
ノーブランド? 中国製チェッカー
アマゾン・楽天・Yahoo!ショッピングともに、複数のショップが適当なブランド名をつけたりして販売していますが、どれもおそらく同じものだと思います。
本記事執筆時点では、AliExpressで購入するのが安いようです。僕はそのときはすぐに欲しかったのでアマゾンでポチりました。
使用方法は至ってシンプルで、単3電池を三本入れて、真ん中のTEST/RESETボタンを一回押すだけです。特になんの設定も必要ありません。というか、何も設定できません。
基本的には、部屋の壁などに固定する壁掛け式のセンサーのようです。電池を入れたら一年間バッテリーが持つようです。
一酸化炭素濃度が50ppmの環境に60~90分間晒されるとアラームが鳴ります。
濃度が濃い場合はもっと短い時間でアラームが鳴ります。例えば、濃度が100ppmのときは10-40分、300ppmのときは3分ほどです。
アマゾンとかで見かけるこの手のものは、中国で↓みたいな価格で仕入れることができるような安物なので、なんとなく全幅の信頼を置くことができないです。
なので、僕は次に上げる別のチェッカー(とはいえこれも割と安い中国製ですが)と併用して保険をかけたつもりになっています。
SMART SENSOR : ST9700
これはAliExpressで購入しました。
少なくとも僕が購入したときは3,000円程度でした。
アマゾン等ではこの商品は見つかりませんでしたが、これの下位機種(?)であるAS8700Aが倍以上の価格で販売されています。
ST9700もAS8700Aもスペックは同じようです。違いは見た目がST9700のほうがちょっとガンダムっぽいのと、AS8700Aが液晶なのに対し、ST9700はEL(これは見やすいです)であることです。
AliExpressだと、ST9700とAS8700Aの価格差は300円程度です。AliExpressで購入するならST9700の方をおすすめします。
後に説明しますが、温度も見れるし、警報を鳴らしたい濃度も設定で変更可能だったりと、わりと良いものだと思います。
Smart Sensor ST9700/AS8700Aの使い方

僕が使っているのはST9700ですが、使い方はほぼAS8700Aも同じだと思います。一部のボタンの機能は違いますが(例えばST9700はELディスプレイなのでバックライトのON/OFFはない)。
説明書は英語の物しか付属していませんでしたし、ちょっとわかりにくい設定もあるので、ここで基本的な使い方を説明します。
電源ON/OFF
これは特に迷うことはないと思います。
電源ボタンを押せば、電源が入ります。このとき、謎のカウントダウンが画面に表示されますが、そのままにしておけば普通に立ち上がります。
カウントダウンの意味はよく分かりません・・・
電源を切る際は1秒くらい長押しです。
電源について、注意事項があります。
この製品は、電源を入れたままだと3,4日程度で電池切れになってしまいます。
基本的に、必要な時だけ(例えば火器を使用しているときだけ)電源を入れて使うようにしましょう。
キャンプの際は満充電の電池を入れていくようにした方がよさそうですね。
必要な時だけ使う前提だからだと思いますが、初期状態だと自動電源OFFタイマーが働いてしまいます。(電源投入後10分で自動的に電源がOFFになってしまいます)
キャンプの時の使用では、後に説明する設定で、このタイマーはOFFにしておいた方が良いでしょう?
おすすめ初期設定
オートパワーオフ設定
TS9700は電源投入後、操作なしで一定時間が経つと自動的に電源をOFFにする機能があります。
キャンプ等で一酸化炭素警報器として使用する際は、自動で電源をOFFにしないように設定した方が良いでしょう。
これは、MODEボタンを長押しし、電源ボタンを押すことでON/OFFを切り替えます。
ここの設定値を”off”にすると、自動電源OFFが無効になります(つまり電源が勝手に切れなくなります)。
表示単位の設定
濃度の単位と温度の単位を設定します。
まず、濃度の単位はμmol/molとPPMを選べます。
濃度の単位は、「UNIT」ボタンを長押しすることで切り替えることができます。
1μmol/mol = 1PPMなので、表示される数値はどちらでも同じです。
数字の下に表示される単位がμmol/molかPPMかの違いだけですし、どちらでもよいと思いますが、PPM表記のほうがより一般的ではないかと思います。
温度の単位は「℉(華氏)」と「℃(摂氏)」の切り替えが可能です。
「UINT」ボタンを押すと℉と℃が切り替わります。
この記事を読んでいる人のほとんどは℃(摂氏)のほうがなじみ深いですよね?
アラームを出す濃度の設定
TS9700は2段階の濃度警報があります。
初期状態で1段階目は24ppm, 2段階目が600ppmになっていると思います。ここを必要な濃度値に変更可能です。
アラーム濃度は、「SET」ボタンを押すことで設定できます。
SETボタンを押すと、1段階目のアラーム濃度(Alarm Low)と2段階目のアラーム濃度(Alarm High)が切り替わりますので、それぞれの設定画面で「UINT」ボタン、「MODE」ボタンで設定値を上下することにより設定します。
Smart Sensor TS9700は良い!
やはりSmart Sensor TS9700は、コスパを考えると使ってみて非常に良いものだと思いました。
ディスプレイの表示は見やすいし、常に一酸化炭素濃度が表示されているので、なんとなく安心感があります。
※ ただし、その表示が正しいのかどうかについては、検証できていませんが・・・
3,000円程度と考えると、非常に優れた製品だと思います。しつこいですが、検出した濃度が正確なのかどうかはわかりませんが・・・
電池の切れが早いこともあり、一応バックアップに(ちょっと怪しいかもしれない)一酸化炭素チェッカーとの併用が望ましいとは思いますが。
AliExpressの買い物は不安ですか?
僕はわりとよく使っています。安いので。
AliExpressがよくわからない方は、以下の記事も参考にしてみてください。