虫よけの正しい使い方と選び方

キャンプスタイル

春から夏・秋にかけて、アウトドアで活動する際に悩まされる蚊・アブ・ブヨ(ブユ)等の対策として、肌に塗るタイプの虫よけを使うことが多いと思います。

この虫よけですが、全然効かないという人も多いですね。
医薬品・医薬外部品のちゃんとした虫よけを使っているのに、蚊に刺されまくる場合の原因は、使用している虫よけ自体の問題ではなく、殆どのケースで使い方の問題です。

本記事では、虫よけの効果を活かすための正しい使い方や乳幼児への使用も含めた正しい使い方について説明します。

殺虫効果と忌避効果

蚊/アブ/ブヨ等の虫対策としては、虫を殺してしまう(殺虫)方法と、寄せつけない(忌避)ようにする方法がありますよね?

屋内など、虫の逃げ場がない場所では、殺虫効果のあるもので手っ取り早く殺してしまう方法を取ることが多いと思いますが、アウトドアでの虫除け対策では忌避効果のあるもので、虫に刺されないようにすることが基本となります。

屋外では、殺虫剤などを使ってもすぐに拡散してしまいますし、蚊取り線香なども同様に、屋外ではなかなか殺虫効果が現れるような濃度にはなりません。

肌や服に塗る虫よけであれば、屋内外問わずその効果が期待できます。
実際、アウトドアで最も効果がある虫対策は、肌に虫除けを塗ることだと思います。

虫よけの種類

各社から様々な虫よけが販売されていますが、直接肌に塗ることができる虫よけに使われている有効成分は、日本国内では、現時点(2020年7月)では2種類のみです。

なぜなら、日本ではその2種類のみしか肌に塗る虫よけ薬として認可されていないからです。

その1つはディートというもので、もう一つがイカリジンという成分です。

ディート

ディート(DEET)は、すでに50年以上前から使われているもので、現在でも世界で最も使われている虫よけだそうです。

少なくとも本記事執筆時点では日本でも1番多く使われています。

昔からあるものですが、虫よけの効果は非常に高く、対応する虫も、蚊・アブ・ブヨ・マダニ・ナンキンムシ・ヤマビル等々と、アウトドアで悩まされる虫の多くに効果があります。

稀に皮膚炎などをおこすことがあるようで、特に子供の使用には以下の制限があります。

  • 生後6ヶ月未満の乳児には使用しないこと
  • 6ヶ月以上2歳未満の場合、使用は1日1回までとすること
  • 2歳以上12歳未満の場合、使用は1日1〜3回とすること
  • 12歳未満の場合、顔には使わないこと

ディートは一部のプラスチックを溶かす性質があるため、レーヨンなど(ナイロンや綿はOK)の服にはかからないように注意する必要があります。

効果の持続時間はディートの濃度などによって変わりますが、高濃度(30%)のタイプで6時間ほどが目安になります。
ディートをマイクロカプセル内に閉じ込めて持続時間を伸ばす(忌避効果はやや落ちる)ようにしているものなどもあるため、各製品の表記を確認するようにしましょう。

イカリジン

イカリジンは日本で認可されたのが2015年と、比較的新しい虫よけ成分です。
とは言え、ヨーロッパなどでは1998年から販売されているものなので、ディートほどではありませんが、それなりに長期的な健康リスクについても心配なさそうだと思います。

対応する虫が、蚊・アブ・ブヨ・マダニのみとなっており、ディートよりも少なくなります。とはいえ、実際には以下のような事情もあり、他の虫にも効くような気もしていますし、そもそもこれら4種をカバーできていればキャンプなどでは多くの場合十分かと思います。

医療品ゃ医療機器の審査等を行う、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)という機関があります。
このPDMAで、日本初のイカリジンを用いた虫よけの審査報告書(pdf)が公開されています。
これを読んでみると、実際にいろいろな試験をしており、蚊などの忌避率や持続時間が確かにディートと同様であることがわかります。
そして、この報告書を見ていくと、「本剤の有効性について」という項目で述べられているのですが、効果をテストされたのが、蚊成虫・アブ・ブヨ・マダニだけなので、適用害虫をこれらの4種としただけであることがわかります。
もしかしたら、他の虫もテストしたものの効果がなかったからデータを出していないだけかもしれませんが、そのあたりはちょっとわかりませんでした。
こちらのサイトには、上記以外の、サシバエ・ノミ・ヤマビル他にも効果があると記述されていますが、根拠等が不明で信頼できる情報かどうか判断できませんでした。
いろいろ調べてみたのですが、上記4種類以外の虫に対する効果については、信頼できそうな研究結果等を見つけることができませんでした。

効き目や持続時間はディートと同程度であり、大きなメリットは、肌に対する刺激が少なく、年齢にかからわず使用制限がありません。そのため、赤ちゃんにも使えますし、塗り直しもできます。

※ ディートでも同様ですが、むしろイカリジン、ディートを溶かすために含まれるアルコールに過敏な人のほうが多いのではないかと思います。
※ 残念なことに、現時点ではイカリジンの虫除けでノンアルコールの製品はすくなくとも日本国内では販売されていません。

ディートの場合はちょっと気になる匂いもベタつきもありませんし、プラスチックを溶かすようなこともありません。

OLE/PMD

これは日本では認可されていないので医薬品・医薬部外品としての製品はありませんが、CDCではディートやイカリジンと同等の効果があるものとして推奨されています。

OLEとはOil of lemon eucalyptus(直訳するとレモンユーカリの油)のことであり(この名称が色々な誤解を生み出しているのですがそれは後で説明します)、PMD(p-Menthan-3,8-diol)は、このOLEの主成分であり、OLEの虫避け効果は主にこのPMDによるものです。

その名の通り、通常はレモンユーカリから抽出される(PMDは合成でも製造可能)ようです。

安全性については、CDCでは3歳未満の子供には使わないように勧告しています。(そもそも認可されていないので、日本では特に制限はありません)

日本では例えばフマキラーの「服にスプレー スキンベープ ミスト ナチュラル」という長い名前の製品や、アース製薬の「ナチュラル ボタニカルスプレー」がそうです。ただ、先に述べたように、医薬品・医薬部外品として認可されていないので、説明書きには肌に塗って使ってはいけないと明記されています。

これらのように、医療品・医療部外品以外のもので虫除けの効果を標榜するものは「雑貨」としう扱いで販売されています。「雑貨」の虫よけの場合、人に対して使用することはできませんので、通常は服などに使用しなければならないと説明書きに記述があります。
また、医薬品、医薬部外品でない場合は人に害がある虫に対する効果を謳うことはできないので、適用害虫としてはユスリカなどの人を刺さない蚊だけしか表示できません。実際にはユスリカだけにしか効かないわけではありません。雑貨ではなく、「化粧品」として販売されているものもありますが、化粧品の場合は肌に使えますが、虫よけの効果を表示することはできません。

レモンユーカリオイル、その他のハーブオイル

特にアウトドア界では人気で、ネットでも絶賛する記事が多いのですけど、あれヤラセかなんかなんでしょうか? 悪いものではないですが、さほど良いものでもないと思います。

様々な成分を持つオイルが販売されていますが、虫よけ効果があるのは、特にレモンユーカリに多く含まれる、シトロネラールやシトロネロールという成分ですが、これは揮発性が高く、1時間ほどしか持ちません。

OLE(Oil of Lemon Eucalyptus)とレモンユーカリ精油(Lemon Eucalyptus [essential] Oil)は別物

“oil of lemon eucalyptus:OLE”と”lemon eucalyptus oil:レモンユーカリ精油”は、どちらもその名の通りレモンユーカリ由来のものですが、全く別物です。
どちらも虫除け効果がありますが、虫除けに有効な成分はそれぞれ異なります。
 ・OLE : PMD(3-メンタン3,8-ジオール)が虫除けの有効成分
 ・レモンユーカリ精油 : シトロネラール、シトロネロールが虫除けの有効成分
さきに述べたように、ディートやイカリジンと同等の効き目・持続時間があるのはOLEの方です。米国CDCで推奨されているのもOLEのほうです。

レモンユーカリ精油系の虫よけ剤の紹介に、厚労省検疫所のサイトから以下の記述を引用している例をよく見かけます。

“ 皮膚に使う虫除け剤としてアメリカ合衆国疾病管理予防センター(CDC)が推奨しているものには、ディート(DEET)、ユーカリ油(レモンユーカリ油)、ピカリジンがあります。”
※ ピカリジン=イカリジンです

厚労省もネタ元くらい示しておけばいいのに、それがないからよくわかりませんが、例えばCDCのこのリリースだけを見るとついつい上記の理解になってしまいますね。
ただ、実はこの厚労省の訳し方がまずい(というか、そもそも”oil of lemon eucalyptus”という名称がまずい)のだと思うのですが、先に述べたように、CDCが推奨しているのはOLEであって、一般的にレモンユーカリ油と呼ばれているものではありません。

以下、CDCのこちらのサイトからの引用です。
“CDC does not recommend using “pure” oil of lemon eucalyptus (essential oil not formulated) as a repellent. It has not undergone similar, validated testing for safety and efficacy and is not registered with EPA as an insect repellent.”

これを訳すと、以下のような意味です。
CDCは、純粋なレモンユーカリの油(エッセンシャルオイル)を虫除けとして使用することを推奨しません。これは安全性、有効性について(OLEと)同等の検査を受けておらず、EPAにも登録されていません」

肌などへの影響については、使用しているオイル等によると思います。例えばレモンユーカリオイルは肌への刺激が多少あるため、人によっては直接肌に塗る使い方はできないこともあるようです。
使用する場合は、説明書きをよく読んで使用するようにしましょう。

この手の商品については、天然素材、あるいは天然由来であるから肌にも優しいし安全性が高いので赤ちゃんにも使用できると考える人(あるいはそう言って販売する人)もいますが、天然素材であること自体はその製品の安全性とは何も関係ありません。

例えば、天然の漆は触るだけでかぶれますし、フグ毒やトリカブト等、天然物にも人の害になるものはいくらでもありますよね? そもそも虫よけ自体が、天然物の虫の毒から身をまもるためのものですし。。

この手の商品では、医薬品・医薬部外品のように厳しい試験をしていない可能性もあり、ハーブやユーカリのオイルには肌に刺激があるものも割と多いです。
信頼できる製品を使うことと、その使用方法をしっかり守ることが重要です。

虫除けの効果や持続時間については、ディートやイカリジンに対する優位性はありませんが、これらの商品のメリットは、(好きな人にとっては)良い香りがすることです。
例えば、レモンユーカリのエッセンシャルオイルには鎮静作用などもあるとされており、リラックス効果が期待できると思います。

一方、(僕みたいに)これらの香りが苦手な人がいるのも事実です。
特に人が多いときやバーベキューなどでの食事の際などは、この臭いには気を使う必要があるかもしれません。

ハッカ油

これも、ハーブ油系のものと同様、蚊・アブ・ブヨ等に対する虫よけ効果はディート・イカリジンには劣ります。
持続時間についても、せいぜい20~30分程度です。

肌への刺激もあるため、敏感肌の人や子供には、直接肌につけずに服などにつけるようにすることをおすすめします。

ハッカ油を使う最大のメリットは、ディートやイカリジンでは効果が期待できないハチに対しても効くことです。
ハッカ油に含まれるメントールの臭いをハチが嫌うため、ハッカ油の臭いがある間はハチが寄り付きません。

効果が持続する時間が少ないので、使うとしても、基本はイカリジン・ディートの補助的に、山を歩くときなどの蜂よけとして使用する方法が良いかもしれません。

ハーブ系の虫よけと同様、あるいはそれ以上に強烈な臭いがしますので、これも特に食事時などは周囲の人の迷惑にならないよう気をつけましょう。

おすすめする虫よけ商品

僕がキャンプ、バーベキューなど長時間のアウトドア活動を行う際の虫よけとしておすすめするのはキンチョーの「お肌の虫よけ プレシャワー PRO」です。

少なくとも、虫よけとしての効果と安全性を優先する場合、医薬部外品として認定されているものを選ぶべきと考えます。いろいろ調査した中でも、ディートやイカリジンは多くの国の公的機関により虫よけとしての使用を推奨されいます。
※ 日本国内ではあまり気にすることはないですが、多くの国では蚊は重篤な病気を媒介するものとして扱うため、特に旅行者には信頼性の高い虫よけの使用を積極的に推奨しています。

まず、イカリジンを使用しているので、子供にも制限なく使用することができます。ディートに特有の臭いやベタつきもありません。

さらにこの商品はイカリジン15%配合であり、これは現在日本国内で認可されているイカリジン虫除けでは最も濃度が高いです。
ディートもそうですが、イカリジンの虫よけは濃度が高いほど効果の持続時間が長くなります。長時間外で過ごす場合は、何度も塗り直す手間を省くためにも、高濃度のものがおすすめです。

イカリジンの他の成分は、ヒアルロン酸Na、水、エタノールのみと、余計なものが入っておらず、キャンプ等でも抵抗なく風呂上がりに使うこともできます。個人的には香料が入っておらず、(アルコールが揮発してしまえば)無臭なところが高評価です。

また、同じくイカリジン15%配合のものにフマキラーの「天使のスキンベープ プレミアム」もあります。
こちらは香料(ベビーソープの香り)が入っています。香料入りのほうが好みの方はこちらになりますね。

虫よけの正しい使い方

もちろん、商品の説明書きに書かれていることを守ることが大前提ですが、ここでは、特にディート・イカリジン系の虫よけを正しく使う方法について説明します。

塗り残しやムラがあると刺される

一番大事なことは、目・口の周りや傷口を除き、肌が露出しているところ全てに塗ることです。
小さな子供の場合、目をこすったり口に入れたりするリスクがあるので、手にも塗らないほうが良いでしょう。

ディートやイカリジンが虫除けバリアを作る範囲は塗った場所から数センチの範囲だけです。塗り残しや塗り足りないところがあれば、大抵はそこを刺されます。虫除けが効かないと言う人はたいていここで失敗しています。
例えば、サンダル履きの場合など、足先に塗り忘れたらそこをやられます。

おすすめの塗り方は、(スプレー式の場合)まず手のひらにスプレーし、露出している肌全体に手で塗ることです 。直接肌にスプレーする場合も、手で伸ばすようにします。
肌が露出している場所の何箇所かにシュッシュッとスプレーして済ませるだけでは、おそらく刺されます。

汗などで流れてしまった場合も、ちゃんと塗り直すようにする必要もありますね。

日焼け止めとの併用

夏の時期など、日焼け防止と虫よけを同時にしたい機会が多いですよね。

日焼け止めと虫除けは同時に使うことが可能です。ただし、次のような注意事項があります。

  • 日焼け止めを先に塗り、その後に虫よけを塗る
  • 日焼け止めの効果は落ちる

CDCも日焼け止めとの併用について、以下のように述べています。

Advise travelers to use separate products, applying sunscreen first, followed by repellent.
—<略>—
Limited data show that DEET-containing insect repellents applied over sunscreen decrease the sun protection factor of the sunscreen by one-third; travelers using both products may therefore need to reapply sunscreen more frequently.

Repellents and Sunscreen : CDC より引用

(訳)
日焼け止めと虫除けは別々の製品を使い、最初に日焼け、次に虫除けを使用するよう、旅行者にアドバイスします。

あるデータは、ディートを含む虫よけを日焼け止めの上から塗ると、日焼け止めの効果が1/3に減少することを示しています。そのため、日焼け止めと虫除けを両方使う場合は、日焼け止めを頻繁に塗り直す必要があります。

イカリジンの場合も同様なのかどうかよくわかりませんが、日焼け止めの効果が弱まるということについては注意しておいたほうが良さそうですね。

 

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